昭和歯学会雑誌
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特別養護老人ホーム入居者の口腔内実態調査
角田 左武郎佐藤 真弥子羽鳥 睦美木村 有子前里 菜穂子日山 邦江斉田 昭子南雲 正男
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2000 年 20 巻 1 号 p. 112-116

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抄録

要介護高齢者のQOLの改善には, 口腔内ケアーも重要と思われる.そのためには, 要介護高齢者の口腔の実態を把握することが必要である.そこで我々は, 1998年に東京都大田区に開設された特別養護老人ホーム入居者の口腔内実態調査を行うとともに, 入居者について施設看護婦から聞き取り調査を行った.施設入居者は男性9名, 女性67名の計76名であった.大部分の入居者は循環器障害, 脳血管障害あるいはアルツハイマー病や痴呆などの脳神経系に障害を持っていた.無歯顎者は26名で, 有歯顎者は50名であった.有歯顎者の口腔清掃は不良で, すべての人が齲蝕あるいは歯周疾患に罹患していた.主な口腔粘膜疾患は舌粘膜の萎縮で, 口腔カンジダ症も数名にみられた.さらに, 口腔ディスキネジアや顎関節の雑音もみられた.60-64歳の平均残存歯数は18.5本で, この歯数は加齢とともに減少した.残存歯数と口腔ディスキネジアの関連を検討すると, 口腔ディスキネジアを有する人に残存歯数が少ない傾向がみられた.以上の結果から, 要介護高齢者は多くの重篤な基礎疾患を有するだけでなく, 各種の口腔病変を持つことが示された.このことから, 要介護高齢者に対する口腔ケアーの重要性が示唆された.

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