昭和歯学会雑誌
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培養破骨細胞の微細構造および吸収機能に対する細胞内タンパク輸送阻害剤Brefeldin-Aの作用
佐原 貴子佐々木 崇寿
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2000 年 20 巻 2 号 p. 180-191

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抄録

Brefeldin-A (BFA) は, 分泌細胞における粗面小胞体 (RER) からゴルジ装置への小胞輸送を阻害し, タンパク性分泌物の合成・分泌を抑制する.著者らは, このBFAを培養破骨細胞に作用させ, 破骨細胞の経時的な微細構造変化と吸収機能発現の変化を解析した.BFA非存在下の対照群の培養破骨細胞は, 共培養した象牙質切片に対して波状縁と明帯を形成し, 象牙質表面に多数の吸収窩を形成した.一方, BFAを培養液に添加した実験群の破骨細胞では, 波状縁がほぼ完全に消失するか不明瞭であるほか, ゴルジ装置の消失, RER内腔の拡大等の細胞構造の変化が観察された.また共培養した象牙質切片における吸収窩の形成は, 対照群では経時的に増加したが, BFA添加群では, 切片表面の脱灰領域ならびに吸収窩の形成ともに強く抑制された.しかし明帯の形成と象牙質切片への細胞接着は, BFAによって阻害されなかった.以上の実験結果から, 波状縁の形成には, RERからゴルジ装置へのタンパク輸送経路の存在が密接に関連しており, この輸送経路の阻害が破骨細胞の吸収能を著しく抑制することが明らかとなった.したがって本実験系は, 破骨細胞における種々のタンパク分子の発現経路と機能の解析に有用であることが示唆された.

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