昭和歯学会雑誌
Online ISSN : 2186-5396
Print ISSN : 0285-922X
ISSN-L : 0285-922X
ラット口蓋の実験的瘢痕組織に関する組織酵素学的研究
FIZ法を用いたゼラチナーゼ活性の経時的推移
高瀬 涼子大嶋 貴子中納 治久平川 崇槇 宏太郎柴崎 好伸入江 太朗立川 哲彦
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 20 巻 2 号 p. 232-240

詳細
抄録

本研究は口蓋裂患者における口蓋閉鎖術後の口蓋粘膜に生じる瘢痕組織における細胞外基質の分解系の活性変化を解析することを目的とした.実験は3週齢SD系雄性ラットの口蓋に粘膜骨膜切除を施した後, in situ zymography法を用いて1, 2, 4, 8週目におけるゼラチナーゼ活性の発現分布を比較検討した.その結果, 切除後1週目の粘膜骨膜切除部位は炎症性細胞浸潤を伴う幼弱な肉芽組織で形成され, その部には高いゼラチナーゼ活性を認めた.この時期の上皮の再生はわずかであり, その再生上皮にはゼラチナーゼ活性を認めなかった.切除後2週以降では, 炎症性細胞浸潤が消退していくに伴い, ゼラチナーゼ活性も弱くなり, 術後のゼラチナーゼ活性は炎症性変化と強い相関を有していた.上皮部では切除後の創面に再生上皮が形成され, 上皮細胞分化による角質形成に伴いゼラチナーゼ活性が発現していた.切除後, 8週目では, 上皮下結合織は細胞成分の少ない線維性結合織によりなり, ゼラチナーゼ活性は, ほとんど認めなかった.この時期の再生上皮は正常上皮と比較してその構造や細胞組成, さらにはゼラチナーゼ活性に差を認めなかった.以上のことより, ラット口蓋粘膜におけるゼラチナーゼ活性は, 瘢痕形成過程における炎症性細胞浸潤の多寡と相関性を示すことが示唆された.

著者関連情報
© 昭和歯学会
前の記事 次の記事
feedback
Top