昭和歯学会雑誌
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家族性に出現した多数歯欠損を伴う部分無歯症の矯正治療例
有島 常雄斎藤 茂石橋 薫小倉 有美子塩谷 あや柴崎 好伸
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2000 年 20 巻 3 号 p. 344-354

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抄録

部分無歯症は, 永久歯列の一部が欠損したときに用いられる用語である.歯の先天欠如は多くの場合家族的に発現し, その原因は遺伝的傾向が強いという報告が多く, 部分無歯症も例外ではない.今回, 母親と三人の娘全員に発現した部分無歯症のうち, 多数歯欠損を伴う長女と三女の矯正治療を経験した.治療対象となった両名は上唇小帯の強直, 正中離開, 短根歯など極めて類似した口腔内所見であり, 欠損歯数は長女が14歯, 三女が13歯であった.マルチブラケット法による矯正治療では個々の歯の移動を2-3mm以内とする治療目標のみを設定したが, 長女の治療期間には2年以上を要し, 保定開始後短期間で正中離開の再発を招いた.長女の治療結果をふまえた三女の治療は動的期間を短縮化し, 1年1か月でほぼ満足の得られる状態となった.保定期間は逆に2年2か月と長女より長く設定した.両者とも保定後にブリッジによる治療が必要であったが, 今後は矯正学的にもまた補綴学的にも長期的な咬合の管理が必要と考える.

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