昭和歯学会雑誌
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口腔外科領域の悪性腫瘍切除手術における自己血輸血の有用性
佐々木 寛五島 衣子山嵜 博義吉村 節
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2000 年 20 巻 4 号 p. 466-469

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抄録

当院における口腔外科領域の手術のうち, 輸血を考慮する必要のある症例は, 顎矯正手術と悪性腫瘍切除手術が大半である.同種血輸血によるHIV, 肝炎ウイルスなどの感染, 輸血後移植片対宿主病 (GVHD) などの副作用を防止するために, 同種血輸血に対し最低限15~50Gyの放射線を照射して使用することや, 自己血輸血の使用が推奨されており, 当院の顎矯正手術では, 自己血輸血が普及している.しかし悪性腫瘍切除術においてはまだ, 自己血輸血はあまり普及していないのが現状である.今回著者らは, 1991年から1999年8月までの8年8か月間に昭和大学歯科病院で行われた, 悪性腫瘍切除手術301症例における輸血状況について検索し, 自己血輸血の有用性を検討した.手術中の平均出血量は971ml, 輸血症例数は301症例のうち163症例と55%を占めていた.また, 自己血輸血施行症例数は50例であった.自己血準備のある症例では, 出血量800ml未満で全例, 出血量800~1800ml未満で約半数の症例が自己血輸血のみで対応していた.出血量1800~2500ml未満では自己血のみで対応できたものは10例中2例, 出血量2500ml以上では1例もなかった.悪性腫瘍切除手術でも, 貯血式と希釈式を併用して自己血を準備することにより, 同種血輸血量の削減, また回避をすることが可能と思われた.

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