歯科診療という心理的ストレスあるいは診療行為が, 患者の全身状態に予期せぬ影響を与えることがある.このような事態は, 高齢者あるいは生活習慣病を持った有病者においてさらに高まることが予想される.そこで本稿では, 一般的な歯科診療が全身的にどのような影響をおよぼす可能性があるか述べるとともに, 生じた場合の対応を概説した.さらに, 平成11年1月から平成12年3月までの間で, 入院して歯科診療を行った58名の患者について, 処置中の血圧の変動幅を検討した.その結果, 生活習慣病の有無で比較したところ, 生活習慣病を持った患者では変動幅が有意に大きかった.また, 65歳以上の高齢者と65歳未満で比較したところ, 65歳以上の人で変動幅が大きいことが示された.