現在, 血液製剤の安全性は, 非常に向上してきているが, ウィンドウ期にある献血者からの提供による血液からの感染や, 輸血後のGVHD (Graft versus host disease) などの危険は内在している.また, 血液製剤を国内の献血血液で充足する必要性から, 血液製剤の使用の適正化がいわれている.これらの理由から手術中の出血に対して, 自己血輸血が推奨されている.当科では自己血輸血を希釈式により, 1991年から開始し, その後貯血式自己血採血の開始に伴い, 顎変形症手術症例ではほぼ100%に同種血輸血回避が行われていた.また, 出血量の減少を目的とした低血圧麻酔の併用や, 悪性腫瘍手術症例についての適用についても検討している.しかし, 自己血輸血を適切かつ安全に行うためには, 採血量の限界や, 希釈式自己血採血での急速採血に伴う循環動態の変化などの知識が必要である.