昭和歯学会雑誌
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破骨細胞の分化と機能を調節する骨芽細胞の役割とその分子機構
宇田川 信之高見 正道自見 英治郎伊藤 雅波小林 幹一郎須沢 徹夫片桐 岳信新木 敏正高橋 直之
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2001 年 21 巻 1 号 p. 64-69

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抄録

破骨細胞は高度に石灰化した骨組織を破壊・吸収する唯一の細胞である.骨吸収を司る多核の破骨細胞はマクロファージ系の前駆細胞より分化する.この破骨細胞の分化と機能は, 骨形成を司る骨芽細胞あるいは骨髄細胞由来のストローマ細胞により厳格に調節されている.大理石骨病を呈するop/opマウスの解析より, 骨芽細胞が産生するマクロファージコロニー刺激因子 (M-CSF) が破骨細胞前駆細胞の分化に必須な因子であることが示された.更に最近, 骨芽細胞が発現し破骨細胞の分化と機能を調節する腫瘍壊死因子 (TNF) ファミリーに属する破骨細胞分化因子 (osteoclast differentiation factor, ODF/receptor activator of NF-κB ligand, RANKL) がクローニングされ, 骨芽細胞による骨吸収の調節メカニズムのほぼ全容が解明された.骨吸収の調節は, Ca代謝調節ホルモンと共に局所で産生される各種のサイトカインが重要な役割を担っている.骨吸収促進因子は骨芽細胞あるいは間質細胞に作用してRANKLの発現を促進する.しかし, TNFαやIL-1は破骨細胞前駆細胞や破骨細胞に直接作用し, RANKLのシグナルを介さずに破骨細胞の分化や骨吸収機能を促進することも明らかにされた.さらに, 骨形成因子 (BMP) をはじめとするTGF-βスーパーファミリーに属するサイトカインがRANKLの存在下で破骨細胞の分化と機能を促進する結果も得られた.現在, これらのサイトカインとRANKLとのシグナル伝達のクロストークに関する解析が活発に行われている.

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