昭和歯学会雑誌
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開咬患者の矯正治療前後における咀嚼機能に関する横断的研究
田中 憲男笠原 茂樹斎藤 茂栗林 泰大塚 純正柴崎 好伸
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2001 年 21 巻 4 号 p. 435-442

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抄録

開咬患者の矯正治療による咀嚼機能の効果を調べるため, 同患者の動的治療開始前 (以下, 開咬者群), 保定中 (以下, 治療者群) および, その対照として女子正常咬合者 (以下・正常者群) について以下の項目を計測した.測定項目は1.オーバージェット (以下, OJ), オーバーバイト (以下, OB), 2.ソフトプレートワックスを用いた前歯の咬断能力, 3.デンタルプレスケールを用いた咬合接触面積, 咬合力, 平均圧力, 4.チューインガム法による糖溶出量, 5.ナソヘキサグラフを用いたガム咀嚼時における下顎運動記録である.そして, 以下の結果を得た.1.正常者群のOJの平均は2.4mm, OBは2.3mm, 開咬者群のOJの平均は1.4mm, OBは-1.9mm, 治療者群のOJの平均は1.7mm, OBは1.5mmであった.2.前歯の咬断能力において正常者群および治療者群は, 開咬者群に対して有意に大きかった.3.咬合接触面積, 咬合力において正常者群は, 開咬者群, 治療者群に対して有意に大きかった.平均圧力において治療者群は, 正常者群に対して有意に大きかったが, 開咬者群と治療者群間には有意差はなかった.4.糖溶出量において正常者群は, 開咬者群および治療者群に対して有意に大きかったが, 開咬者群と治療者群間には有意差はなかった.5.ガム咀嚼時における下顎運動の咀嚼リズムでは各群間に有意差はみられなかった.以上より, 開咬患者に対する歯科矯正治療により被蓋の改善がなされた結果, 前歯の咬断能力の獲得が認められた.しかし, 咬合接触面積, 咬合力, 咀嚼能力, 咀嚼リズムにおいては矯正治療による変化が起こりにくいことが示唆された.

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