2002 年 22 巻 3 号 p. 220-228
長期の歯科矯正治療ならびに補綴処置により, 咬合の再構成を行った左側唇顎口蓋裂の一治験例について報告する.症例は初診時年齢7歳5か月の左側唇顎口蓋裂の女性で, 上顎左側の側切歯の欠如がみられた.生後4か月時に口唇形成, 1歳4か月時に口蓋形成, 3歳4か月時に口唇修正, 5歳7か月時に鼻修正が実施された.矯正処置は第一期治療時に上顎歯列の側方拡大および上顎の前方発育誘導を行った.その後, 上下顎の成長観察したのち, 第二期治療時に抜歯を併用し3年5か月間のマルチブラケット法による咬合の再構成を行った.床装置を用いた3年2か月の保定の後, 顎裂部の側切歯欠損部に固定式補綴物を装着した.一部に補綴物を併用した咬合の再構成であるが, 経過観察後も咬合は比較的安定している.