昭和歯学会雑誌
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破骨細胞分化抑制因子による卵巣摘出マウスの骨吸収抑制に関する組織化学的研究
河崎 昭浩
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2003 年 23 巻 1 号 p. 14-23

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抄録

破骨細胞分化抑制因子 (osteoprotegerin : 以下, OPG) は, 骨芽細胞に由来する腫瘍壊死因子レセプター・スーパーファミリーの一つであり, 破骨細胞形成を強く抑制する.本研究において著者は, 卵巣摘出 (ovariectomy : 以下, OVX) マウス大腿骨の骨量減少を抑制する目的で, 破骨細胞の骨組織内分布, 微細構造, 液胞型H+-ATPaseの発現に対するOPGの生物学的作用を解析した.実験には生後2か月齢の雌性ddYマウスを用い, 1) 開腹のみの偽手術を行った対照群 (以下, Sham群), 2) OVX群, 3) OVX後にOPGを投与したOVX/OPG群の3群に分けた.OVX/OPG群では, 卵巣摘出術後, 7日間連日OPGを腹腔内投与した (0.3mg/kg/日).3群全てのマウスを術後7日目に環流固定し, 採取した大腿骨を, 反射電子検出器 (backscattered electron microscopy : 以下, BSE), 光顕, 電顕, 免疫組織化学によって解析した.大腿骨骨幹端部位の縦断研磨標本のBSE像を基にした形態計測では, OVX群の骨髄腔単位面積あたりの海面骨領域の面積率がSham群のものよりも有意に低く, OVXによる骨量減少が確認された.またOVX群に比べ, OVX/OPG群では有意に高い海面骨領域の面積率を示した.一方, 海面骨梁上における酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ (TRAP) 陽性の破骨細胞数に関しては, OVX/OPG群がOVX群よりやや低い値を示したが, 3実験群の間に有意差は認められなかった.しかし微細構造学的には, OVX/OPG群の破骨細胞における波状縁の消失が, Sham群, OVX群の破骨細胞よりも多く観察された.さらに破骨細胞における液胞型H+-ATPaseの発現は, 波状縁の消失に伴い強く抑制された.ただし3群共に, 破骨細胞のネクローシスあるいはアポトーシス様変化は観察されなかった.以上の実験結果から, OPG投与は破骨細胞の構造変化と骨吸収活性の抑制により, OVXマウスにおける海面骨量の減少を有意に抑制することが示唆された.

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