2005 年 25 巻 2 号 p. 100-106
患者は初診時10歳7か月の女児, 歯並びを主訴に来院した.上顎両側犬歯の先天性欠如および上顎両側側切歯の舌側転位を伴うAngle II級症例である.一期治療として上顎両側側切歯の舌側転位の改善を行った後, 二期治療として永久歯列完成とともに下顎両側第一小臼歯を抜去し, エッジワイズ装置による治療を開始した.両側犬歯の先天性欠如がある上顎では, 第一小臼歯を犬歯とみなし排列を行った.犬歯のかわりに小臼歯を用いる場合, 舌側咬頭の形態修正により咬頭干渉を回避することが多いが, 本症例では歯の移動のみで咬頭干渉を回避し, 下顎の前方ならびに側方運動時における誘導も良好な機能的咬合が得られた.