2005 年 25 巻 2 号 p. 71-78
グラム陽生菌の表層タンパク質は, 感染部位への付着・宿主細胞への侵入・栄養源の獲得・免疫応答の回避に重要な役割を果たしている.そのため, 表層タンパク質は細菌の感染機序を理解する上で非常に興味深く, さらに, 感染症治療の標的分子としての可能性を秘めている.グラム陽性菌の感染に関わる多くの病原性表層タンパク質は, Sortaseと呼ばれる膜結合型トランスペプチダービによって細胞壁に共有結合されている.グラム陽性病原性細菌はSortaseを欠損するとその毒力を喪失することから, Sortaseが病原性に重要な役割を果たしていると考えられている.加えて, 近年の細菌ゲノム解析データは, Sortaseが広くグラム陽性菌に分布していることを示唆している.これらの知見は, Sortaseがグラム陽性病原性細菌に対する新たな治療薬の普遍的な標的酵素であることを示唆している.