昭和歯学会雑誌
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歯顎顔面用コーンビームX線CTを用いた顔面非対称性下顎前突症の3次元評価
柴崎 礼子陳 信光久保田 雅人中納 治久槇 宏太郎
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2006 年 26 巻 1 号 p. 39-50

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抄録

従来, 矯正歯科分野では正面・側面頭部X線規格写真や歯列模型を用いて顎顔面骨格や咬合状態を分析していた.しかし, 顎顔面形態に著しい変形が認められる骨格性不正咬合症例において, これら複数の異次元データを総合評価し, 顎変形の程度を詳細に分析することは難しい.そこで本研究は, 顎変形症における歯顎顔面用コーンビームX線CTの有用性を検証するために, 顔面非対称性下顎前突症の特徴を3次元的に評価した.さらに, 同患者の正面・側面頭部X線規格写真と3次元分析結果とを比較することで, 2次元的評価の限界を検討した.その結果, 1) 下顎正中左側偏位症例の左側下顎頭最外突出点は, 顔面正中平面 (N, ANS, PNSの3点をもつ平面) に対して非偏位側よりも内遠心側に位置していた, 2) 下顎正中左側偏位症例の左側下顎角位置は, 非偏位側のそれよりも上方にあった, 3) 2次元計測は撮影時の頭位により結果が異なり, 特に下顎頭および第一大臼歯の前後・垂直的位置の評価が困難であった.以上から, 下顎骨左側偏位を伴った下顎前突症の非偏位側下顎骨形態は偏位側に牽引されるように変形し, 咬合面第一大臼歯も骨の偏位に伴い内側へ位置することがわかった.また, コーンビームX線CT検査と正面・側面頭部X線規格写真の比較から, 2次元検査では前後的な歪みを含む詳細な検討は難しかった.つまり, 顎変形症治療を計画する上で歯顎顔面用コーンビームX線CTによる3次元的な解析は重要であると考えられた.さらに, 顎顔面の3次元的な歪みの特徴を把握することが, 顎変形症の発症メカニズム・時期など成因を探るための一助となるものと推測された.

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