昭和歯学会雑誌
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オステオプロテゲリン局所投与による破骨細胞形成と骨吸収抑制の試み
亀澤 初水馬谷原 光織佐々木 崇寿
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2006 年 26 巻 4 号 p. 323-333

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抄録

破骨細胞の分化と機能発現には, 問質細胞が発現するRANKLと破骨細胞のRANKの結合が必須である.破骨細胞分化抑制因子であるオステオプロテゲリン (osteoprotegerin : OPG) は, RANKに競合してRANKLと結合し, 破骨細胞分化と骨吸収機能を抑制する.本研究では, 矯正用顎間ゴムを用いた加圧刺激による歯の移動に伴う, 歯槽骨吸収と破骨細胞分化に対する, 可溶性OPG局所投与の効果を組織化学的に解析した.生後8週齢のWistar系雄性ラットの両側上顎第一・第二臼歯の歯間接触点の問にゴムを挿入し, 歯問分離を行った.ゴム挿入後, 右側第一・第二臼歯問の頬・口蓋側歯根膜にOPGを連日局所投与した (0.3mg/kg).対照側として, 左側同部位に同量の生理食塩水を投与した.OPGまたは生理食塩水投与1日後と4日後にラットを灌流固定し, 採取した顎骨を脱灰後にパラフィン包埋した.切片作製後, H-E染色, TRAP染色, RANKL免疫染色を行い, さらに破骨細胞数と歯槽骨量の骨形態計測を行った.また破骨細胞の透過電顕観察とH+-ATPaseの免疫電顕観察を行った.その結果, OPG投与側の歯槽骨量は対照側に比較して有意差がなかったが, 単位歯槽骨周長および歯槽骨面積あたりのTRAP陽性破骨細胞数に関しては, OPG4日間投与側が対象側に対して有意に低値を示した.OPG投与側の破骨細胞は波状縁構造が未発達なものが多く, H+-ATPaseの発現も散在性であった.以上の実験結果から, OPG局所投与は, 歯槽骨における機械的加圧刺激による破骨細胞形成と破骨細胞機能を抑制することが示唆された.

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