昭和歯学会雑誌
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ヒト歯肉線維芽細胞を用いた生体材料の生物学的評価に関する研究
土谷 聡岩佐 文則川和 忠治若林 克敏尾関 雅彦芝 〓彦立川 哲彦
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2006 年 26 巻 4 号 p. 348-354

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抄録

高分子電解質錯体 (PEC) は細胞接着や細胞増殖を阻害しないため生体材料としての応用が期待される.そこで, 本研究ではPECを培養皿にコーティングし, ヒト歯肉線維芽細胞を培養した後, 細胞接着による細胞接着分子インテグリンの発現様相およびシグナル伝達物質リン酸化チロシンを含むタンパクの発現を検索し, 歯科領域における機能性生体材料として高分子電解質錯体を生物学的に評価した.その結果以下のことが判明した.1.PECをコーティングしたデッシュを用いた細胞培養では細胞のインテグリン発現は対照群と同様に確認された.2.PECをコーティングしたデッシュを用いた細胞培養ではインテグリンおよびビンキュリンの局在はいずれも細胞全体に認められ, その発現様相は対照群と同様な像を示した.3.PECをコーティングしたデッシュを用いた細胞培養では細胞接着によるリン酸化チロシンを含むタンパクは対照群と同様に確認され, PEC上培養でも細胞内伝達機構が正常に機能していることが示唆された.以上の結果からPECをコーティングしたデッシュを用いた細胞培養ではインテグリンの発現および細胞内情報伝達を行うチロシンリン酸化反応を阻害するものではないことが判明した.

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