昭和歯学会雑誌
Online ISSN : 2186-5396
Print ISSN : 0285-922X
ISSN-L : 0285-922X
成熟骨の表層の立体超微形態学的研究
申 富雄江川 薫
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 5 巻 1 号 p. 31-37

詳細
抄録

成体のカニクイザルの下顎体部を材料として, 成熟骨の表層の立体超微形態を, 高分解能の走査電子顕微鏡によって検索した.骨基質の表層を被覆している骨芽細胞と, 無定形の有機性基質をトリプシソ溶液で消化させ, 露出させた成熟骨の表層基質の大部分は, ほぼ同方向に平行に配列されている膠原細線維束で形成されていた.膠原細線維束は, 直径が800-900Åで, 約500Åの周期的な横紋構造が認められる未石灰化の膠原細線維で構成されていた.膠原細線維束の表層の膠原細線維は, 部分的に隣接した膠原細線維束に移行していた.膠原細線維束の間隙には, 骨芽細胞の突起が進入していたと考えられる紡錘形の骨細管が開口していた.膠原細線維上と膠原細線維の間隙に, 直径が500-800Åのきわめて多数の微細穎粒が集積している膠原細線維束で形成されている表層基質が部分的に認められた.成熟骨基質の最表層から約2μmは, 膠原細線維上と膠原細線維の間隙に, 直径が500-800Åの多数の微細穎粒が付着している膠原細線維束で形成されていた.膠原細線維束で形成されている層の最深部から約1μmの深さまでの基質の割断面, すなわち石灰化前線には, きわめて多数の微細穎粒が集積しており, 膠原細線維はほとんど認められなかった.表層基質を形成している膠原細線維束を, 次亜塩素酸ナトリウム溶液で溶解して除去し, 露出させた石灰化前線は, 長径が約2μmの楕円体形の石灰化球で形成されていた.石灰化球の表層は, 均質な穎粒構造を呈していた.石灰化前線の深層部の基質は, 均質な穎粒構造を呈していた.この基質のCaとPの比から, 微細穎粒はアパタイト結晶で構成されていると考えられる.

著者関連情報
© 昭和歯学会
前の記事 次の記事
feedback
Top