昭和歯学会雑誌
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発癌剤 (DMBA) 投与による舌粘膜上皮培養細胞の初期変化
とくに細胞膜および細胞間結合について
秋田 智雄
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1985 年 5 巻 2 号 p. 81-97

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抄録

舌粘膜上皮の分離培養を行い, 発癌剤9, 10-dimethy1-1, 2-benzanthracene (DMBA) を投与し, 細胞膜および細胞間結合についてフリーズ・フラクチャー法を用いて検索した.細胞膜は発癌剤投与後6時間で一過性に膜内粒子の減少を認め, 12時間から2日の間では逆に膜内粒子の増加を認めたが, その増加はとくにE面に顕著であった.3日以後になると膜内粒子の全体数が減少し, 対照群とほぼ同様な値になったが, P面とE面の分布を比較するとE面は粒子の増加を維持したままであった.Gap junctionは発癌剤投与後6時間より細胞膜にしめる割合が45-80%と減少を示し, また電気生理学的にもcoupling ratioが投与後12時間より対照群と比較し約60%の減少を認めたことから, 細胞間連絡の欠如あるいは減少が示唆された.Desmosomeは超薄切片法により種々の破壊像を認め, 同時に細胞膜にしめる割合も発癌剤投与後12時間より35-60%の減少を認めた.以上のことから, 発癌とは非常に早期より細胞膜および細胞間結合に変化が起こり, それらの破壊と修正をくり返しながら細胞が母集団から逸脱し, 無制限の増殖を示すようになることと考えられ, したがって細胞膜および細胞間結合の変化は発癌過程の一つの重要な表現形質であることが示唆された.

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