1987 年 7 巻 1 号 p. 115-121
上下顎の咬頭嵌合関係を規定している「支持域」は, 個性正常咬合を有する個体において, その垂直的変位が約100μm以内に安定していることをすでに明らかとした.本報では, 咬頭嵌合位が広範な歯周疾患などにより不定な症例において下顎「支持域」を表現する上下顎顎間距離の測定をし, 個性正常咬合者との比較検討を行ったところ, 被験者は正常者群に比して垂直顎間距離が2-7倍の変位量を示した.また咬頭嵌合位の規定はこれまで構造的な考え方を基盤としてきたが, 適正な変位性を有する咬頭嵌合位つまり機能時の咬合接触の安定性を重視した咬頭嵌合位と規定すべきであることが示唆された.