昭和歯学会雑誌
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成熟骨表層基質の立体超微形態的増齢変化
山下 義久横田 芳彦大野 茂高橋 修
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1988 年 8 巻 2 号 p. 145-151

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抄録

生後30-60週齢のICR系マウスの下顎体部を用いて, 骨基質表層の立体超微形態を観察した.トリプシンにて骨芽細胞と無定形有機性基質が除去され, 骨基質最表層が露出した.最表層はコラーゲン細線維で形成されていたが, 増齢とともにコラーゲン細線維上に長径7nm, 短径5nmほどの楕円体形の微細穎粒が付着し, 各所で集合して直径10-30nmの穎粒を形成しはじめる.その後, さらにコラーゲン細線維間にも穎粒が密集するとともにその直径を増し, かつ穎粒の存在領域を拡大していくことが明らかとなった.これは骨基質表面に存在する骨芽細胞が, 骨の成熟に伴いコラーゲン細線維の形成を減じ, 石灰化基質の付着のみが長期にわたり徐々に進行したためと考えられる.これらの微細穎粒は骨小腔においても認められた.一方, コラゲナーゼによって骨表面のコラーゲン細線維が除かれ, 多数の穎粒が分節的に集積する部分が観察されたが, 長期にわたる石灰化よりもやや急速に石灰化している部分と思われる.深層の骨基質が割断後のトリプシン処理によって露出し, 微細穎粒の集合した直径20-50nmの穎粒が集積していた.X線元素分析により微細穎粒はハイドロキシアパタイトの結晶であり, この結晶が集合して穎粒構造となり, この穎粒が集積して石灰化骨基質となることが明らかとなり, 骨基質最表層と骨小腔内壁における石灰化が裏付けられた.

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