昭和歯学会雑誌
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胎生期における骨基質形成過程の立体超微形態学的研究
瀬川 和之町田 尚道飯倉 智北村 昌三
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1988 年 8 巻 3 号 p. 297-306

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抄録

活発に基質が形成されている胎生中期の胎児の下顎体部を材料として, 骨基質の超微形態上の変化を, 高分解能の走査電子顕微鏡で観察するとともに, あわせて未石灰化および石灰化骨基質を透過電子顕微鏡で観察した.骨芽細胞下には最表層から約10μmにわたって未石灰化骨基質が形成されていた.骨基質の最表層の大部分は, 疎または密なコラーゲン細線維網で形成されていたが, しばしぼ直径約300-500Åの穎粒状構造物が散在性に付着したコラーゲン細線維束で形成されている部分も観察された.コラーゲン細線維網の深層は, 規則的に配列されたコラーゲン細線維束で形成されていた.したがって, コラーゲン細線維は, 逐次網状から束状へと改変されると考えられる.骨基質の表層には, しばしば穎粒状構造物が堆積してコラーゲン細線維の構造が消失している部分も認められた.穎粒状構造物は骨基質の深層にいくとともに徐々に増加し, 最表層から約10μmよりも深層では, 願粒状構造物によって埋没された不明瞭な線維様構造物以外は, ほとんど大部分が均質な穎粒構造を呈していた.最表層から約10μmと20μmの深さの骨基質のX線分析の結果を比較すると, 約10μmの領域は約20μmの領域よりもCaとPの濃度が低かったが, 両領域の穎粒状構造物はCa・P比から石灰化物か石灰化物を含有する構造物であると考えられる.

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