昭和歯学会雑誌
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矯正治療後の器械保定時における下顎前歯部叢生の再発の原因について
小野寺 知子加藤 博重柴崎 好伸福原 達郎
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1989 年 9 巻 3 号 p. 307-319

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抄録

矯正治療において動的治療終了後の後戻りは, 臨床上大きな問題である.特に下顎前歯部の叢生の後戻りは, 他より発現が早いといわれている.そこでこうしたことを確認するため動的処置終了から器械的保定1年後に生じた下顎前歯部叢生症例に対し, 新たに設定した判定基準を用い・それらの頻度と原因について検討した.資料として, 本学歯科病院矯正科外来にて下顎前歯部叢生をマルチ・ブラケット法によって治療を行ったもののうち, 器械保定1年を経過した80症例の側頭部X線規格写真, オルソ・パントモグラフィー, 石膏模型, 口腔内写真を用いた.検討項目としては, (1) 性別, (2) 動的治療期間, (3) 初診時∠ANB, (4) 初診時overjet, (5) 治療に伴うoverjetの変化量, (6) 抜歯の有無 (7) 第三大臼歯の有無, (8) 保定装置の種類 (9) 初診時3+3 discrepancy量, (10) 初診時下顎前歯歯軸, (11) 治療に伴う下顎前歯歯軸の変化量, の11項目について調査を行った.その結果保定時における下顎前歯部叢生には, 初診時下顎前歯歯軸, 治療に伴うoverjetの変化, 初診時∠ANB, 初診時3+3 discrepancy量などが当該症状発現の原因に強く関与していることがわかった.これらの症例の矯正治療に際し, 保定期の下顎前歯部叢生に十分な注意を払うことが示唆された.

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