2008 年 28 巻 2 号 p. 87-92
小児歯科臨床において歯根形成途上の歯髄処置は, 歯根形成および発育に重大な影響を及ぼす.根未完成歯における根の歯根形成および発育と根尖閉鎖について, 組織学的な報告は多いが, 歯髄処置が未発達歯根の体積や長さに与える影響の定量的な報告は少なく, 臨床上重要な指標が明確ではなかった.我々はWistar系ラット第一臼歯歯根形成過程, ならびに歯髄感染時の歯根形成過程を従来の組織学的手法による定性化と, 高精度CT撮影 (Micro-CT) による定量化の併用により解析することを試みた.正常群では, Micro-CTにより生後4週から10週ラットにおいて歯根形成が段階的に充進することが定量化された.歯髄感染群は生後4週目に露髄処置を行ったのち, 2~6週間後の歯根をH-E染色像で観察すると, 6週で根先端象牙質とセメント質増加がみられた.しかし, CT定量化の結果は, 正常群と比較し, 歯根形成量が優位に低下していることが明らかとなった.以上の結果から, 歯根形成過程の解析に従来の組織学的解析とMicro-CTを併用することにより経時的な歯根形成動態の解析に有効であることが示されたことから, 硬組織全般での形成, 破壊, 修復過程の解析への応用が期待される.