Dental Medicine Research
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顎関節症を伴う成人開咬症例における自家歯牙移植を用いた歯科矯正治験例
山口 徹太郎渡辺 みゆき愼 宏太郎
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2008 年 28 巻 2 号 p. 99-106

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抄録

開咬症例は形態的な問題のみならず機能的な問題も関与していることから, 治療後の安定性への不安は大きい.同時に顎関節症を併発していることも多く, 機能的不調和に対する治療・管理は苦慮することが多い.患者は初診時年齢25歳4か月の女性で, 前歯で咬めないこと, 顎関節部の痺痛と雑音を主訴として来院した.咬合所見では臼歯はAngle I級, 前歯部から側方歯部までにおよぶ開咬と叢生を呈していた.MRI所見から閉口時, 両側顎関節円板は前方へ転位しており, 左側は開口時においても復位は認められず, 右側は復位が認められた.また, 下顎右側第一大臼歯は不適切な根管治療により保存が困難であると判断された.最初にスタビライゼーション型スプリントにより両側顎関節部の疼痛の消失ならびに顎位を確認した.その後, 下顎右側第一大臼歯抜去, 下顎右側第三大臼歯が移植された.引き続き上下左右第一小臼歯の抜去, 下顎下縁平面角を開大させないことに留意しマルチブラケット装置による機能的咬合の確立をはかり, 良好な咬合関係を獲得することができた.移植歯は施術後7年においても経過は良好であることを確認した.また, 関節円板の前方転位は整復することはできなかったが, 顎関節部の疼痛の消失を動的治療終了後4年を超える観察においても確認した.

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