日本皮膚科学会雑誌
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Stewart-Treves syndromeの1例―rIL-2の治療経験及び本邦報告例の文献的考察―
鍋谷 玲子小林 まさ子藤田 優江口 奈緒美寄藤 和彦岡本 昭二
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1990 年 100 巻 10 号 p. 1029-

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抄録

76歳女子,乳癌術後右上腕に高度のリンパ浮腫が続き,11年後にangiosarcomaが発生した(Stewart-Treves syndrome).Recombinant interleukin2(rIL-2:TGP-3)1日80~120万JRUの投与を開始したが,点滴静注では発熱,倦怠感,血圧低下などの副作用が強く,明らかな効果はなかった.局注では開始2週間後より,局注部位は暗赤色化し,4週間後には,組織学的に腫瘍細胞はほとんど消失していた.局注は副作用も少なく,全身投与より有効だった.またrIL-2投与中は,血中のLAK活性,NK活性は上昇し,IL-2レセプター陽性細胞が増加していた.自験例は腫瘍が広範囲に及んだため,rIL-2単独療法では腫瘍全体としての改善が得られず,さらに放射線療法,温熱療法を施行したが,発症後16ヵ月で死亡した.Stewart-Treves syndromeの本邦報告例24例において,術後から腫瘍発生までの期間は平均11年,発症後の平均生存期間は約11ヵ月であった.angiosarcomaに対して,rIL-2は有効な免疫療法になり得るが,その効果的な投与方法については,さらに検討を要する.

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© 1990 日本皮膚科学会
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