日本皮膚科学会雑誌
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Tape strippingにより増殖活性の亢進したモルモット表皮に対するPUVA1回処置の細胞動態学的作用
筒井 清広
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1990 年 100 巻 14 号 p. 1415-

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抄録

数種の表皮細胞動態指標の経時的変動の解析により,tape strippingにより増殖活性の亢進したモルモット表皮に対する8-MOP+UVA(PUVA)1回処置の作用を検討した.表皮の細胞動態指標として,フローサイトメトリーにより測定されたS期細胞の分画(S分画)とG2+M期細胞の分画(G2+M分画),プロモデオキシウリジン標識指数(LI)および核分裂指数(MI)を用いた.対照に比べて,PUVA処置後の表皮ではS分画およびLIの値は共に3時間後に軽度の減少を示したのち増加した.PUVA0.5~1J/cm2照射の範囲内では,照射量の増加とともにS分画増加のピークはより高くなり,LI増加のピークはより低くなる傾向がみられた.G2+M分画値は12時間後まで減少し,24時間後から168時間後まで対照レベルより低いかまたはそれを僅かに超える程度で,照射量の増加とともにMIの低下期間が延長する傾向がみられた.得られた結果から,stripping後PUVA1回処置を行った表皮では,PUVA処置の3時間後までDNA合成の抑制とG1-S境界の不完全ブロックが起こり,次いでDNA合成は亢進し,部分的に同調した細胞はS期へ流入し,さらにG2期へ流入するが,PUVA処置後より継続するG2-M境界ブロックのため細胞は一定期間G2期に蓄積するものと推測された.なお,PUVA処置により起こるG2-M境界ブロックとそれに伴う核分裂の減少は,正常表皮に比べて,stripping後の表皮ではより長く継続することが明らかにされた.

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© 1990 日本皮膚科学会
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