1990 年 100 巻 2 号 p. 153-
発生毛組織における細胞動態を解析するため,生下時および7日目のマウスの背部皮膚をbromodeoxyuridine(BrdU)でそのDNA合成期細胞を標識し,抗BrdUモノクローナル抗体を用いて免疫組織化学的に検討した.成長期毛組織では毛球部の各細胞層に分化する細胞が標識され,また,外毛根鞘では陽性細胞は毛球直上部に多く,上方に向い次第に減少する.毛発生過程では,半球状に表皮より突出した毛芽の外層に一様にS期細胞が分布する.毛杭期にその陽性細胞は,下端部と上方外側部の二群に分かれる.下端部の細胞群は,次第に毛乳頭を囲み下方に集中し,上方に各細胞層を産生する.また,上方外側部の陽性細胞は上皮素を伸長し,外毛根鞘構造が明瞭になると,その増殖は毛球上部が主体となる.これら発生毛組織の細胞増殖の動態を正しく理解することは,毛組織の研究に極めて重要と思われた.