日本皮膚科学会雑誌
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成人型アトピー性皮膚炎の細菌ワクチン注射による治療(Ⅱ)―作用機序―
向井 秀樹西岡 清野口 俊彦藤本 進西山 茂夫秋山 茂
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1990 年 100 巻 4 号 p. 495-

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抄録

細菌ワクチン注射の作用機序を明らかにするために,臨床効果と細胞性免疫および細菌特異IgG,IgE抗体価の推移を測定した.有効群では無効群に比し,末梢血中のCD8陽性細胞数が有意に上昇しており,したがってCD4/CD8比も有意に低下していた.経時的にCD4/CD8比をみると,有効群では3ヵ月以内より低下傾向を認め,6ヵ月以上経つと無効群に比し有意に低下していた.細菌特異IgG抗体価は,有効群が臨床効果に遅れて抗体価が上昇するのに対し,無効群ではほとんど抗体価の変動がみられなかった.有効群のIgG抗体価は,ブドウ球菌(ブ菌)がもつProtein Aの有無に拘らず使用菌種以外のブ菌抗体価も同様に上昇する傾向が認められた.一方IgE抗体価は両群とも有意な変動はみられなかった.したがって,本治療法の作用機序は細胞性免疫の強化,IgG抗体産生により皮表細菌数が減少し,皮膚刺激性の低下および細菌による直接的ないし間接的なヒスタミン遊離作用を抑制することで,アトピー性皮膚炎の皮疹や瘙痒感が改善するものと考えた.

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© 1990 日本皮膚科学会
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