抄録
開院以来約11年間に,組織学的に悪性リンパ腫による皮膚病変と診断された31例につき,臨床・組織学的に興味ある点・電顕所見・免疫状態・治療などを検討した.①治療前の状態で原発巣と続発皮膚病変の細胞形態が違う例をLennertリンパ腫に認めた.②寛解後再発(約3年未治療)のTCLの1例に腫瘍細胞赤血球貪食像を認めた.③MFの1例は,末期において好酸球増多が病勢を反映した.④MF,TCL,ATLの電顕所見を検討し,ATL,MFに表皮内LCが腫瘍細胞と接触する像を,ATLの腫瘍細胞などの中にTRSを認めた.⑤ツ反・DNCB試験による免疫能は,A群はB群に比べて明らかに良いが,DNCB試験での正常率はA群でも20%に過ぎなかった.⑥A群の非特異疹は末期例に多く,白癬・カンジダ病などの真菌性疾患が多かった.帯状疱疹は検討した31例中5例に認めた.⑦A群の治療は,皮膚に病変が限局している時期には局所療法を原則にしており,煩雑ではあるが,反応の早さ,再発までの間隔,治療の無痛性,副作用などの点から,軟X線療法が局所療法として優れた方法と思われた.またIFN局注療法も試みるべき治療と思われた.