日本皮膚科学会雑誌
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全身性白皮症及び健常日本人頭毛中eumelanin・pheomelanin含有量及び全身性白皮症の尿中5-s-cysteinyldopa及び5-hydroxy-6-methoxyindole-2-carboxylic acidの尿中排泄に関する研究
斉藤 範夫森嶋 隆文
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1990 年 100 巻 8 号 p. 853-

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抄録

全身性白皮症頭毛4検体(チロジナーゼ陽性型3例,陰性型1例)と健常日本人頭毛100検体を被験材料とし,頭毛中eumelanin・pheomelaninをIto&Fujitaのメラニン微量定量法をもって測定し,全身性白皮症症例では尿中5-s-cysteinyldopa,尿中5-hydroxy-6-methoxyindole-2-carboxylic acidを測定し,次の興味ある結果を得た.1.健常日本人頭毛中eumelanin・pheomelanin含有量1)年代を問わず,黒色頭毛中にpheomelaninが含有され,総メラニン量に対するpheomelaninの比率はほぼ一定で,約5%であった.2)2~5歳群の頭毛中総メラニン量は他の年代群に比して有意に低く,総メラニンに対するpheomelaninの比率は他の年代層に比して有意に高値であった.2.全身性白皮症患者頭毛中eumelanin・pheomelanin含有量,尿中5-s-cysteinyldopa値及び尿中5-hydroxy-6-methoxyindole-2-carboxylic acid値1)チロジナーゼ陰性型では毛色は白で,頭毛中eumelanin・pheomelaninはいずれも検出不能で,尿中5-s-cysteinyldopaも極めて低値であった.2)チロジナーゼ陽性型では毛色は淡黄色で,頭毛中にpheomelaninのみが検出され,尿中5-s-cysteinyldopa値は同年代のそれと有意の差はなかった.3)eumelanin生成の指標の一つである尿中5-hydroxy-6-methoxyindole-2-carboxylic acidはチロジナーゼ陽性型,陰性型ともに検出不能であった.以上,チロジナーゼ陽性型全身性白皮症頭毛の黄色調はpheomelanin生成によることが示唆され,尿中5-s-cysteinyldopa値は必ずしもメラニン産生能を反映していないものと考えられた.

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© 1990 日本皮膚科学会
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