1990 年 100 巻 8 号 p. 883-
漢方生薬の一つである黄連のPropionibacterium acnesに対する抗菌および抗リパーゼ活性について検討した.各種濃度の黄連を添加したPYG-トリブチリン培地にP. acnesを接種し,産生される酪酸およびプロピオン酸をガスクロマトグラフィーで経時的に測定した.また,P. acnes菌数も同時に測定した.黄連の作用によって,P. acnesの発育量を示すプロピオン酸は,リパーゼ活性量を示す酪酸より多く減少した.さらに岸下らの考案したリパーゼ検査用培地に黄連を添加し検討したが,リパーゼ陰性集落を検出できなかった.これらの成績から,黄連のP. acnesに対する抗リパーゼ作用は,抗菌作用により菌の発育が抑制されるために起こるものと考えられた.