ヒトの抜去毛包および外科的摘出毛包をコラーゲン・ゲル内に包埋し,毛包細胞を培養した.毛球を付着しない抜去毛包では毛包細胞が棘状あるいはアメーバー状に増殖したが,毛球を付着する毛包では2つの特徴的な増殖様式がみられた.1つは毛乳頭が縮小し毛球部より圧出されると同時に毛球下部より著明な上皮系細胞の増殖が毛包と反対方向におこり,漸次,包埋毛包と対称的に毛包様組織を構築し,その中心部に毛類似の角化物を形成した.他の1つは,毛乳頭が毛球部より圧出されず,毛幹の伸長と毛包の新生をみる増殖様式であった.しかし,毛乳頭が毛母部より離れると同時に毛幹の伸長は停止し,それ以降は外毛根鞘細胞の周辺部への増殖のみを認めた.毛包のゲル内包埋培養は3次元での器官培養として有用と思われた.