日本皮膚科学会雑誌
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小児アトピー性皮膚炎患者より得た剥離角質細胞の走査型電子顕微鏡所見
大畑 智川島 忠興山本 一哉
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1991 年 101 巻 10 号 p. 1131-

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抄録

テープストリッピング法により採取した小児アトピー性皮膚炎患者の最外層の角質細胞の体表面側と裏面の両面を走査型電子顕微鏡で観察した.アトピー性皮膚炎の患者群では,健常者群に比べて体表面側のスポンジ状構造と裏面の微細絨毛様突起が著明であった.さらに患者群の中でも,これらの形態はいずれも苔癬化局面の方が毛孔性小丘疹よりも強度であり,臨床症状の重症度に相関した.患者群の無疹部での両面の形態は健常者群の角質細胞により近かった.一方,健常者群の角質細胞の体表面側は平滑であり,裏面には一部に弱い微細絨毛様突起と細いシワ状隆起が認められた.本方法は患者に苦痛を与えず,剥離角質細胞の体表面側と裏面の形態を同時に観察できる上,試料作製法も極めて簡便であり,電顕による表面形態観察に優れた方法であると思われる.本所見は,以前行った光顕での角層検査所見,特に有核細胞の出現の程度と一致するものであった.従って,本方法はアトピー性皮膚炎の臨床症状の経過観察や治療薬剤の有効性評価に応用可能と考えられる.

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© 1991 日本皮膚科学会
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