1991 年 101 巻 12 号 p. 1369-
全身性強皮症(PSS)は皮膚やその他多臓器へのコラーゲン等の結合組織成分の沈着を主病変とする疾患である.B. Bermanらは脳微小循環改善剤であるpentoxifyllineが培養ヒト真皮由来線維芽細胞の増殖,コラーゲン,フィブロネクチン,グリコスアミノグリカン合成を抑制し,コラゲナーゼ活性を亢進させることを報告した.本研究において,我々は,まず培養ヒト真皮由来線維芽細胞におけるpentoxifyllineのα1(Ⅰ)コラーゲン,フィブロネクチン,コラゲナーゼのmRNAレベルに及ぼす影響を検討した.α1(Ⅰ)コラーゲン及びフィブロネクチンのmRNAレベルはpentoxifylline 101~102μg/mlで濃度依存性に減少し,逆にコラゲナーゼmRNAは軽度の増加を示した.さらに11例のPSS患者にpentoxifyllineを連日投与(pentoxifylline 300mg/日)し,皮膚硬化,最大努力開口時開口幅,最大努力伸展時手指関節角度,最大努力躯手指外転時角度,最大努力外転時指間距離について治療前後で測定し検討した.最大努力開口時開口幅,最大努力手指外転時角度,最大努力外転時指間距離は投与開始4ヵ月後,有意に改善が認められた.