1991 年 101 巻 7 号 p. 727-
家系内で初発のneurilemmomatosisの男性例と,neurilemmomatosisの父・息子例の計3例を報告した.第1例は15歳時から多発する皮膚腫瘍を,19歳時から両側の聴神経腫瘍による神経症状を自覚し,22歳時に初診した.色素斑はみられず,切除した6個の皮膚腫瘍と,聴神経腫瘍,脊髄腫瘍はいずれも組織学的に典型的なneurilemmomaであった.24歳の現在まで,残存する皮膚および脳・脊髄腫瘍は緩徐ながら増大してきている.第2例は21歳時に皮膚腫瘍を自覚し,25歳頃から増数,増大を認め,35歳時に聴神経腫瘍の症状を自覚した.36歳の初診時,皮膚腫瘍は20数個に達していたが,色素斑はみられなかった.皮膚,両側聴神経腫瘍の組織はいずれもneurilemmomaであった.脳外科での術後3週で死亡した.第2例の唯一の子である第3例は出生時から背部に数個小腫瘍を認めたが,5歳の初診時にも色素斑はみられなかった.皮膚腫瘍の組織はneurilemmomaであった.上記3例はいずれも神経線維腫と色素斑を欠き,前2例は皮膚,脳・脊髄に多発するneurilemmomaを認め,neurilemmomatosisの典型例であった.本症の報告例の多くは遺伝関係を認めていないが,第3例は本症の母斑症としての性格を支持するものと思われ,neurofibromatosisとは異なる本症を特徴付ける遺伝子異常が示唆される.