日本皮膚科学会雑誌
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陽子線療法を行った悪性黒色腫の1例
梅林 芳弘坪内 由里大塚 藤男上野 賢一辻井 博彦
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1992 年 102 巻 12 号 p. 1529-

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抄録

76歳の悪性黒色腫(ALM)に対し,筑波大学陽子線医学利用研究センターにおいて,陽子線療法を行った.右環指末節皮膚の原発巣に対し,1990年4月13日から4月26日までの14日間に1回線量10Gyで10回照射し,総線量100Gyで放射線治療を終了した.照射終了後約50日で照射野は完全にびらん化し,肉眼的に腫瘤は消失した.照射終了後から約70日で上皮化が完成し,生検では真皮上層にメラノファージは散見されるが腫瘍細胞を思わせる細胞は認めなかった.一方,転移巣に対しては,DAV療法,β-インターフェロン局注による集学的治療を行ったが、肺転移を来して照射から8ヵ月後に死亡した.陽子線はその優れた線量分布特性ゆえに従来の放射線では困難であった短期大線量照射法を可能たらしめるが,これは悪性黒色腫の放射線治療の可能性を拓くものと思われる.

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© 1992 日本皮膚科学会
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