日本皮膚科学会雑誌
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皮膚科領域における血漿交換療法の実施状況について―特にその有用性の検討―
山田 裕道高森 建二小川 秀興
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1992 年 102 巻 3 号 p. 363-

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抄録

本邦皮膚科領域における血漿交換(PE)療法の実施状況を知るためにアンケート調査を行った.調査対象は全国の,大学病院皮膚科103施設と一般病院皮膚科(皮膚科研修認定病院)203施設の計306施設とした.回答率は89.2%(大学病院で100%,一般病院で83.7%)であった.PE療法施行率は大学病院で55施設,53.4%,一般病院で18施設,10.6%であった.PE療法施行症例は全体で23疾患164症例であった.疾患の内訳は天疱瘡57例,類天疱瘡37例と自己免疫性水疱症が最も多く57%を占め,次いで尋常性乾癬,SLEの順であった.またPE療法の有効率は,自己免疫性水疱症では約80%を示し,対象とした症例の多くが従来の治療法に抵抗性を示すもの,ステロイド剤の副作用を示すものである点を勘案すると極めて良好な成績と考えられた.一方,副作用出現率は13.4%であり,このうち40%が肝障害であった.これは遠心分離法によるPE療法を行った際に用いたヒト新鮮血漿(FFP)に由来するものであり,現在PE療法の主流である二重濾過血漿分離法では肝障害の出現が認められていない.このことから,今後はこれら副作用の大部分は回避可能と思われた.PE療法の難治性疾患に対する有効性を反映して,皮膚科領域でのPE療法の健康保険の適応が大多数の施設から要望された.

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© 1992 日本皮膚科学会
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