日本皮膚科学会雑誌
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抗HMW-MAA MoAb (Ab1)と抗抗イディオタイプMoAb(Ab3)の免疫組織学的比較検討
山田 雅信
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1992 年 102 巻 8 号 p. 947-

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抄録

ヒト高分子メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)に対するモノクローナル抗体(MoAb)である抗HMW-MAA MoAb(Ab1)763.74を免疫原として同系BALB/cマウスを免疫し,多数の抗イディオタイプMoAb(Ab2)を作製した.そのAb2の中からinternal imageを持つと思われる抗イディオタイプMoAb MK2-23を免疫原として同様に同系BALB/cマウスを免疫し,抗抗イディオタイプMOAb(Ab3)を作製した.このAb3は,血清学的にも,生化学的にも,Ab1と同一の抗原を認識することが証明され,MK2-23がinternal imageを持つことが明らかにされた.これまで抗HMW-MAA MoAbはメラノーマだけでなく,BCCや色素性母斑とも反応することが知られているが,今回筆者は,8種の抗抗イディオタイプMoAb(Ab3)を用い,抗HMW-MAA MoAb(Ab1)763.74との染色性の相違について,メラノーマほか種々の皮膚腫瘍を対象にして免疫組織学的に比較検討した.その結果,Ab3は,全体的にAb1より少し弱い反応性を示したが,ヒトメラノーマ原発巣及び転移巣と反応した.NM原発巣では,Ab3はAb1と同様に4例中全例に陽性であった.NM転移巣では,Ab1とGH368は5例中4例に,その他のAb3では5例中3例に陽性であった.ALM原発巣では,Ab1及び3種のAb3では8例中4例に,他のAb3では8例中3例に陽性を示した.Ab1で陰性の4例はすべてAb3でも陰性であった.ALM転移巣では,Ab1もAb3も4例中2例に陽性で,2種のAb3はAb1に非常に類似した染色性を示した.BCC,色素性母斑では,Ab1もAb3もhomogeneousに強陽性を示した.青色母斑,SCCでは全例陰性であった.Ab3はその染色性の違いから3グループに分類できた.Ab3とヒトメラノーマの免疫組織学的な反応性は,indirect binding assayやinhibition assayによるヒトメラノーマ培養細胞Colo38との免疫血清学的な反応性とほぼ一致する結果であった.また,Ab3がoriginal antigenのHMW-MAAと反応するという事実より,抗イディオタイプMoAb MK2-23が,original antigenであるHMW-MAAに対するinternal imageを持つことが免疫組織学的に証明された.さらに,ヒトメラノーマに関するモノクローナル抗体を用いた免疫組織学的検討により,抗原であるHMW-MAAを中心として,Ab1(抗HMW-MAA MoAb 763.74),Ab2(抗イディオタイプMoAb MK2-23),そしてAb3(抗抗イディオタイプMoAb GHseries)によるイディオタイプネットワークを形成していることが明らかになった.

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© 1992 日本皮膚科学会
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