日本皮膚科学会雑誌
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小児Ki-1リンパ腫―Host response に着目して―
岩崎 雅米元 康蔵勝岡 憲生竹崎 伸一郎西山 茂夫島本 由紀子舩渡 忠男
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1993 年 103 巻 1 号 p. 5-

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抄録

小児Ki-1リンパ腫の2症例を報告し,臨床的,組織学的,免疫組織化学的,電顕的およびDNA解析(サザンブロット法)にて検討した.症例1:15歳,男子.発熱に伴って,体幹,顔面,四肢に紅色丘疹が一部に小結節を混じて播種状に出現し,同時にリンパ節腫脹がみられた.皮膚,リンパ節いずれも多形性を示すびまん性の腫瘍細胞の増殖がみられ,リンパ節において赤血球貪食像をみる異型細胞を散見した.病理組織学的には従来の“malignant histiocytosis”に相当すると考えられ,化学療法を施行するも全経過7ヵ月で死亡した.症例2:12歳,男子.鼻尖部にドーム状隆起性腫瘤が出現し,reticulum cell sarcomaとの診断のもと,放射線療法を施行し,腫瘤の消失をみた.その後も時期を置いて孤在性に体幹,四肢に腫瘤の出現をみる.病変はいずれの場合も皮膚に限局し,経過は12年に至る.2症例は免疫学的な検討から腫瘍細胞がCD30陽性で,ヘルパーT細胞としての性格を有し,「小児Ki-1リンパ腫」と言えるものであるが,臨床像および予後の点で著しい相違がみられた.また,組織学的,免疫組織化学的および電顕的に両者を詳細に比較検討したところ,前者には腫瘍細胞の集簇巣が明瞭に存在し,反応性の細胞の混在に乏しく,一方後者では腫瘍細胞と反応性の細胞とが概して渾然として病変を構成しており,この傾向は病変が大きくなればなるほど著明であった.2症例の比較において,宿主の反応,特に腫瘍細胞と反応性の細胞との関係と,予後との関連が示唆された.

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© 1993 日本皮膚科学会
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