日本皮膚科学会雑誌
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表皮細胞の分化と増殖に及ぼす線維芽細胞の影響
高木 順之三橋 善比古石川 博康橋本 功
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1993 年 103 巻 6 号 p. 747-

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抄録

線維芽細胞が表皮細胞の分化と増殖に与える影響とその機序を,4つの異なる細胞培養法を用いて検索した.すなわち,培養液中に支持台で固定された透過性コラーゲン膜を置き,この上に表皮細胞を培養して,線維芽細胞を膜の裏面または培養皿の底面に同時に培養した時,表皮細胞のみを単独で培養した時,および別の容器に線維芽細胞を培養してこのconditioned medium(CM)を加えた時の,それぞれにおげる表皮細胞のタンパク量とcornifled envelope(CE)値を比較した.その結果,タンパク量を増殖の,CEを分化の指標として,表皮細胞かconfluentになり,その後重層化していく時の増殖と分化をみた場合,線維芽細胞は表皮細胞に対して増殖よりもむしろ分化に強く働いていることが示された.この結果はwound healingにおいて,表皮細胞は創面を被った後速やかにCEを形成して表皮としての機能を発揮することを意味し,生体にとって合目的であると考えられる.また,線維芽細胞のCMを用いても同様の結果が得られたことから,その影響は液性因子を介するものであることが確認された.さらに,CMを用いた時に比べ線維芽細胞そのものを同時に培養した後にCE値が高値であったことは,線維芽細胞と表皮細胞間にinteractionが存在した時にその作用が強く働くことを示すものと考えられた.また,培養上清中のEGF,TGF-αおよびIL-6濃度を測定したところ,表皮細胞と線維芽細胞のinteractionによってIL-6が著増することが明らかになった.

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© 1993 日本皮膚科学会
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