日本皮膚科学会雑誌
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Pruritic Papular Eruptionが診断のきっかけとなったHIV感染症の1例
清島 真理子川合 美里森 俊二高橋 健武藤 泰敏
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1993 年 103 巻 7 号 p. 963-

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抄録

症例は62歳,男性.10年以上前より多発性神経炎に罹患していた.輸血の既往はない.初診の約4ヵ月前に1~2日間頭痛,発熱があり,その頃より体幹,四肢に瘙痒を伴う,多発性の,常色~淡紅色,直径2~4mmの丘疹が出現し,一部の丘疹は中央に痂皮を伴った.丘疹の病理組織像は,真皮上~中層にリンパ球,類上皮細胞,好酸球および異物型巨細胞から成る細胞浸潤がみられ,巨細胞肉芽腫の像を呈した.表在リンパ節は触知されなかった.白血球数4,600/μl,リンパ球34.2%(うちCD4 0.6%(10/μl),CD8 72.5%)好酸球14.5%,単球12.5%,抗HIV(human immunodeficiency virus)抗体陽性,抗p24抗体陽性,HIV抗原陰性を示した.胸部X線上で異常所見はなかった.以上の所見から,本症例は無症候性感染状態にあったHIV感染患者にみられたpruritic papular eruption(PPE)と診断した.テルフェナジン120mg/日内服と吉草酸ベタメサゾン軟膏外用を約2ヵ月行ったところ,皮疹は軽快傾向にあり,瘙痒もやや減弱してきている.今後,azidothymidine(AZT)400mg/日内服も併用し,経過観察を行う予定である.

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© 1993 日本皮膚科学会
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