日本皮膚科学会雑誌
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吸収不全によると思われる亜鉛欠乏症の1例
近藤 早苗森 理笹井 陽一郎
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1993 年 103 巻 9 号 p. 1183-

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抄録

75歳男子.慢性関節リウマチ,気管支拡張症,肝硬変,慢性膵炎の合併があり,最近,肺結核にも罹患し加療を受けた.長期の飲酒歴あり.脱毛,爪甲の肥厚・変形,口角炎,舌の萎縮と味覚障害,四肢,臀部,項部の紅斑落屑局面を形成し,血清亜鉛値の低下を認めた.治療として,硫酸亜鉛の内服を行ったが効果無く,静注により臨床症状の著明な改善を見た.経口亜鉛負荷試験を施行したところ,硫酸亜鉛負荷後の血中,尿中の亜鉛値の上昇を認めず,亜鉛ジピコリネート負荷後に著明な上昇を見た.亜鉛ジピコリネートを再発予防に経口投与して有効であった.本例を慢性膵炎,肝硬変に伴っておこる,吸収不全にもとづく亜鉛欠乏症と考えた.

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© 1993 日本皮膚科学会
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