日本皮膚科学会雑誌
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悪性黒色腫細胞株におけるMTS1/CDK4Ⅰ遺伝子の欠失と点突然変異
浅井 寿子和田 知益米元 康蔵衛藤 光西山 茂夫
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1994 年 104 巻 14 号 p. 1715-

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抄録

細胞増殖や細胞周期は多数の因子により制御され,その障害は細胞の腫瘍化に深く関与している.悪性黒色腫における遺伝子変異を明らかにする目的で,細胞増殖・周期に関わる遺伝子群の解析を行った.悪性黒色腫細胞株5株とエックリン汗器官癌由来細胞株(K-ECC)1株を検索対象とし,PCR(polymerase chain reaction)によりN-,K-,H-ras,p53,MDM2ならびにMTS1/CDK4Ⅰ遺伝子の変異を検索した.K-ECCではK-ras,p53の変異とMTS1/CDK4Ⅰの欠失がみられ,多遺伝子の変異が検出された.悪性黒色腫細胞株ではras,p53およびMDM2の異常は1例も認められず,MTS1/CDK4Ⅰ遺伝子の欠失と点突然変異を伴う不活性化が全5株にみられた.悪性黒色腫細胞株において細胞周期の負の抑制因子であるMTS1/CDK4Ⅰ遺伝子の不活性化が高頻度に検出されたことは,細胞周期制御機構の破綻が悪性黒色腫細胞の増殖・腫瘍化に関与していることをし示唆している.

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© 1994 日本皮膚科学会
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