日本皮膚科学会雑誌
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肺高血圧を呈した非定型的汎発性強皮症 Pulmonary veno-occlusive diseaseの存在が疑われた1例
河野 志穂美佐藤 伸一菊池 かな子岩田 充竹原 和彦石橋 康正滝沢 始
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1994 年 104 巻 6 号 p. 783-

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抄録

症例:70歳,男性.初診の1年半前に両下腿に瘙痒を伴う紅斑が生じ,続いて同部位より皮膚硬化が出現し急速に全身に拡大した.また,半年前より労作時呼吸困難も出現した.経過中レイノー現象はなかった.皮膚の病理組織では定型的な強皮症の変化の他に,皮下静脈の内膜肥厚および中膜平滑筋の著明な肥厚を伴う狭窄像が認められた.胸部X線では中肺野を主体とする間質性陰影が,著明な肺高血圧,%DLcoの低下,右心不全を伴って認められた.心エコーにて左心不全はみられなかった.抗核抗体は均質型強陽性であったが,抗トポイソメラーゼⅠ抗体をはじめとする特異抗核抗体は全て陰性であった.ステロイド60mg/日内服にて,胸部X線上の異常陰影と皮膚硬化の急速かつ著明な改善をみた.自験例の肺病変は,全身性強皮症の典型的な肺線維症と明らかに異なっており,著明な肺高血圧,胸部X線上の間質性肺浮腫,左心系正常より,肺静脈に病変の主座があると考えられた.さらに皮膚病理組織においても静脈の狭窄を認めたことから,自験例の肺病変として肺静脈内腔の狭窄をきたすpulmonary veno-occlusive disease(PVOD)の存在が疑われた.全身性強皮症の肺病変としてPVODが認められたとする報告は過去に1例しかなく,自験例は疑い例ではるものの,極めて稀と考え報告した.

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© 1994 日本皮膚科学会
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