日本皮膚科学会雑誌
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予後からみた成人型アトピー性皮膚炎の重症度の解析
平野 眞也加藤 則人安野 洋一
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1995 年 105 巻 10 号 p. 1309-

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抄録

成人型アトピー性皮膚炎(AD)の重症度を検討する目的で,皮疹の増悪のみられた94名のAD患者の治療開始時における皮疹スコア,検査値,皮疹の罹患期間と治療1年後の皮疹スコアとの相関関係を解折した.治療としては生活指導,保湿性外用剤,ステロイド外用剤,抗アレルギー剤を主体とした.治療1年後の皮疹スコアは,治療開始時の皮疹スコア,LDH値,総IgE値,ダニ,ハウスダスト,カンジダ,米,小麦の特異IgE値,末梢血好酸球数,血清MBP値,体幹,顔面皮疹の罹患期間あるいは増悪期間と有意な相関を示した.治療に要したステロイド外用剤の量は皮疹の程度が中等症の患者群では総IgE値,タニ,カンジダ,米の特異IgE値,血清MBP値に依存していた.また,ADの予後を考える上で重要な白内障を合併した患者では喘息の合併・既往率が高く,顔面皮疹の罹患期間が長く,血清MBP値,総IgE値,ダニ,カンジダの特異IgE値が有意に高かった.以上のことより,成人型AD患者の重症度を判断し,予後を予測する上で,皮疹の程度,アレルギー炎症の程度を反映する検査値,ADの時間的経過は重要な因子であると考えられる.また,治療法の効果を判定する際には治療前の皮疹の程度だけではなくアレルギー炎症の程度も考慮する必要があると思われる.

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© 1995 日本皮膚科学会
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