日本皮膚科学会雑誌
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黒毛舌 ―複数種の酵母の存在を認め,複方ヨード・グリセリン(ルゴールR液)により治癒した1例―
奥田 長三郎伊藤 雅章加賀谷 けい子西川 朱實羽山 正義発地 雅夫
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1995 年 105 巻 13 号 p. 1763-

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抄録

55歳男性.舌背が黄褐色でビロード状を呈する.組織学的に,糸状乳頭を含む角層の高度の肥厚がみられ,periodic acid Schiff染色で角層の細胞間に酵母形の真菌要素を認める.毛様物からの真菌培養でCandida glabrata,C. krusei,Saccharomyces cerevisiaeが,一般菌培養でα-StreptococcusとNeisseriaが分離された.酵素抗体法で,抗C. glabrata抗体と抗S. cerevisiae抗体によりそれぞれ陽性に染まる真菌要素が生検標本中に混在してみられた.細菌相はイソジンガーグルで消失したが,イソジンガーグル,各種抗真菌剤,尿素水による含嗽,歯ブラシによる摩擦はいずれも臨床像と真菌学的所見に対して無効であった.しかし,ルゴール液塗布により臨床的,真菌学的に速やかに治癒した.黒毛舌の本態である舌背の過角化の正常化は,ルゴール液による上皮角化機序への直接効果というよりは,その殺菌作用による酵母の死滅の結果である可能性が高い.すなわち,少なくとも自験例では真菌は二次的に増殖したものではなく,黒毛舌の発症の一因であったと考えられる.

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© 1995 日本皮膚科学会
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