日本皮膚科学会雑誌
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生検後,部分消退を示したメルケル細胞癌の1例
荻山 幸子藤井 初美森 聖大橋 勝近藤 隆男千原 太
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1996 年 106 巻 8 号 p. 1097-

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抄録

54歳,女性.生検役1ヵ月の間に部分消退を認めた右下眼瞼のメルケル細胞癌について報告した.部分消退の前後について組織学的に比較し,消退後の組織について免疫組織化学的および電顕的に検討を加えた.初診時の組織では腫瘍細胞は真皮全層にわたって充実性にシート状構造をなしていた.部分消退後の組織では腫瘍細胞は小さな胞巣となり,周囲にはリンパ球の浸潤が強くみられた。電顕でこれらの腫瘍細胞の一部にはミトコンドリアが膨化,崩壊し、細胞膜の破壊による細胞内小器官の流出がみられたが,核の形態は保たれていた。また腫瘍細胞をTdT-mediated dUTP-biotin nick end labeling法により検討したが,アポトーシスの所見は認められなかった.以上の結果から自験例の部分消退にはアポーシスよりネクローシスが大きく関与していると考えられた.

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© 1996 日本皮膚科学会
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