日本皮膚科学会雑誌
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ヒト表皮におけるリソゾームシステインプロテアーゼおよびユビキチンの局在について
佐藤 賢赤坂 俊英似鳥 徹和栗 聡
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1997 年 107 巻 3 号 p. 427-

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抄録

表皮細胞の移動,分化,細胞死の過程における蛋白分解機構を検討する目的で,リソゾームシステインプロテアーゼならびにユビキチンのヒト表皮内局在を免疫組織学的に検索した.高感度,高解像度で知られる蛍光抗体法および共焦点レーザー顕微鏡を用いて検索したところ,表皮細胞はリソゾームシステインプロテアーゼに対する顆粒状免疫反応を示したが,その表皮内分布様式は各酵素で異なっていた,カテプシンBの免疫反応は有棘層下層と基底層に強かったのに対し,カテプシンCおよびLの免疫反応は有棘層上層と顆粒層に強かった.カテプシンHに対する免疫反応は全体に微弱で,主に有棘層と顆粒層に陽性を示した.これとは別に,カテプシンH強陽性を示す細胞が主に有棘層上層に散在した.これらの細胞はCDla陽性で樹枝状突起を有し,ランゲルハンス細胞と考えられた.細胞質浮遊蛋白の分解シグナルであるユビキチンの免疫反応は,基底層と有棘層下層では細胞質にびまん性陽性だったが,有棘層上層と顆粒層では顆粒状陽性だった.これらの結果から,システインプロテアーゼが表皮における蛋白分解系のリソゾーム経路に関与しており,その関与は表皮細胞の分化段階に応じて各酵素で異なることが示唆された.さらに,有棘層上層から顆粒層において,ユビキチンが非リソゾーム経路のみならず,リソゾーム経路にも関与している可能性が示唆された.

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© 1997 日本皮膚科学会
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