1997 年 107 巻 6 号 p. 781-
東京医科歯科大学では,重症の成人型アトピー性皮膚炎患者に対して増悪因子を検討し,それを除去することによってステロイド外用剤の使用を中止しても軽快する症例が多数みられることを報告してきた.今回,増悪因子としての皮膚刺激物質,接触アレルゲンを検討するため,平成3年から平成6年までに入院した成人型アトピー性皮膚炎患者136症例のうち83症例にパッチテストを行った.その結果,標準パッチテスト系列では,52%の患者が1つ以上のアレルゲンに対して陽性反応を示し,患者の使用していたシャンプー,石鹸に対して47%が陽性反応を示した.シャンプー,石鹸などでの陽性反応は,むしろ刺激反応であった可能性が考えられる.また金属のNi,Cr,Coに対しては,それぞれ22.2%,22.2%,12.5%と高頻度に陽性反応が認められた.また,パッチテストにて陽性反応を認めた抗原あるいは刺激物質の31例に対して除去試験を行ったところ,光線過敏症を合併した1例を除き全例で皮膚病変の軽快がみられた.以上の結果より,成人型アトピー性皮膚炎において刺激性皮膚炎あるいはアレルギー性接触皮膚炎の機序を介して皮膚症状の増悪に関与している可能性が示唆され,パッチテストはアトピー性皮膚炎の増悪因子検索において重要な検査法であることが明らかにされた.また,シャンプー,石鹸になどに対する刺激性皮膚炎が関与している例では,使用試験,除去試験による増悪,軽快を確認する必要があり,パッチテストのみならず,使用試験,除去試験が重要な検査法であると考えた.