日本皮膚科学会雑誌
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Bowen病,Bowen癌におけるサイトケラチンの免疫組織 化学的検索と細胞増殖能を用いた悪性度の研究
高山 篤子落合 豊子原 弘之森嶋 隆文
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1997 年 107 巻 7 号 p. 851-

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抄録

Bowen病,Bowen癌において,抗ケラチンモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色と,MIB-1,PCNA,AgNORによる細胞増殖能の検討を行った.そして,それらの所見が腫瘍の細胞学的悪性度を反映する指標になりうるかを腫瘍の起源と併せて検討し,以下の結果を得た.(1)Bowen病のサイトケラチンは表皮と類似した染色態度であった.(2)Bowen癌では真皮内浸潤巣やリンパ節転移巣にサイトケラチン8,18,19などの単層上皮型ケラチンが発現された.(3)Bowen病とBowen癌におけるMIB-1,PCNA陽性率やAgNOR値などの細胞増殖能を比較検討すると,危険率5%以下で有意にBowen癌の増殖能が高値を示した.これらの結果から,Bowen病はinterfollicular epidermal keratinocyte 由来であることが免疫組織化学的に示唆された.またBowen癌においては,腫瘍の分化度が低下するに従い単層上皮型ケラチンが発現し,細胞増殖能は腫瘍の分化度,深達度と相関することが示された.以上よりこれらの疾患に対し,抗ケラチンモノクローナル抗体による免疫組織化学的検索や細胞増殖の検討を行うことは,腫瘍の分化度,予後を推測する上で有意義であると考えられる.

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© 1997 日本皮膚科学会
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